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東京高等裁判所 昭和40年(う)1145号 判決

主文

原判決中被告人三名に関する部分を破棄する。

被告人二木秀雄を懲役三年に、被告人久保俊広を懲役二年に、被告人五嶋徳二郎を懲役一年六月に各処する。

被告人二木、同久保の原審における未決勾留日数中各六〇日を同被告人らの右本刑に算入する。

被告人五嶋に対し、本裁判確定の日より三年間右刑の執行を猶予する。

<訴訟費用の項―省略>

理由

本件控訴の趣意は、被告人二木につき弁護人向江璋悦、同安西義明、被告人久保につき弁護人島田武夫、同島田徳郎、被告人五嶋につき弁護人西山義次、同山本隆幸各連署の控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する当裁判所の審判は次のとおりである。

次に、公判手続の更新に際しては、更新前の公判期日において取り調べた書面等は、証拠書類として取り調べなければならないのであるが、その証拠書類としての取り調べの方法は、刑事訴訟法第三〇五条、同規則第二〇三条の二の定める証拠書類の取り調べ方法、すなわち、原則としてこれを朗読し、または、裁判長が相当と認めるときは朗読に代えて、その要旨を告げることによつてなすべきものと解する。所論は、刑事訴訟規則第二一三条の二第四号によれば、右書面等を取り調べる場合には訴訟関係人が同意した場合に限りその全部若しくは一部の朗読に代えて、相当の方法で取り調べることができるけれども、訴訟関係人の同意がない限り、朗読に代わる相当の方法、すなわち要旨の告知等の簡便な方法をもつてその取り調べをすることは許されない、と主張するけれども、右規則により訴訟関係人の同意のある場合になす相当の方法というのは、刑事訴訟法および同規則が定める証拠書類の取り調べ方法、すなわち朗読あるいは要旨の告知以外に、裁判長が相当と認める一層簡易な方法による取り調べを意味するものと解すべきであつて、刑事訴訟規則第二〇三条の二の定める要旨を告知してなす証拠書類の取り調べは、裁判長が相当と認めるときこれを為し得るのであつて、必ずしも訴訟関係人の同意を必要としないものと解する。原審裁判長が、弁護人らの同意なく、むしろ朗読に代えて要旨を告知してなす証拠調べに異議を申し立てたのに、これを棄却して要旨を告知する方法により右証拠調べを為したとしても、これをもつて訴訟手続の法令に違反したものとして非難することはできない。

以上原判決の理由不備ないし、訴訟手続の法令違反を主張する各論旨はいずれもこれを採用することができない。<後略>(関谷六郎 内田武文 小林宣雄)

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